天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
尋ねる前にやっぱりはぐらかされ、ムッと顔をしかめる。だが、不機嫌になったわけではなく、照れているだけだ。

「私は、黎士さんとお付き合いしていたんですか?」

「そういうのは、言われて納得するんじゃダメだろ」

そんなことを言ってはぐらかすのは何度目か。いい加減、ふたりの関係について、教えてほしいのだが。

「でも、だからって無理に思い出す必要もないと思ってる。今の俺たちがキスしたかった、それでいいんじゃないか?」

勝手にキスをしてきたくせに、しれっとふたりの意思にしてしまう、そのふてぶてしさに少々呆れた。

「したいって言った覚えはありませんけど?」

「嫌ではなかったんだろ? 今だって、抱き締めさせてくれてる」

そう言われると言い返せない。

彼は嬉しそうに抱きしめる腕に力を込めた。

「きっと心が感情を思い出しかけてるんだ」

「感情?」

「たとえば、『猫が好き』だった事実を思い出せなくても、猫を見れば『かわいい』『撫でたい』と思うだろ。そういうこと」

つまり、『黎士が好き』だった事実を思い出せなくても、好意は消えないということ?

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