天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
自分はこの男と、かつて付き合っていたのではないか――そろそろその疑惑を否定しがたくなってきた。

「そこまで匂わせておいて教えてくれないのって、ずるいと思いませんか?」

「したいのは答え合わせじゃない。過去なんてどうでもいい。大事なのは今、藍衣の目を俺に向けることだ」

そう言って、念を押すように額にちゅっと口づける。どこまでも行動が甘くなっていくこの男に、動揺こそするもののこのまま絆されてしまいそうだ。

これだけの献身を見せつけられて、心を許してしまいそうになる自分がいる。

『姉の仇』という誤解も解けた。この男は悪い人ではない――むしろいい人なのだと確信に至りかけている。

もしも自分が彼に惹かれて交際していたのだとしたら、黎士に拒まれた朱璃がひどく傷ついたのも頷ける。好きな人が妹と付き合っていたと知ったら、誰だってショックを受けるだろう。

とはいえ、どうして朱璃が罪悪感を抱えるに至ったのか、その経緯はまだわからない。

「そろそろ戻ろうか。藍衣を補充できたから、よく眠れそうな気がする」

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