天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
ひとり満足そうに言ってコテージの中に促す。海と星空を楽しんだ――というよりは、藍衣にイチャついて満足したようだ。

寝室に戻った黎士は調子に乗ったのか、藍衣をそのままベッドに引きずりこもうとした。

「だ、ダメ! そういうのは!」

彼の腕の中から抜け出して、もうひとつのベッドへと逃げ込む。

「なにもしないよ。添い寝だけ」

「それでもダメです!」

同じ布団で眠るなんてとんでもない。それに浮かれた彼にハグなりキスなりじゃれつかれる未来が予見できる。

「……そうだ。大事なこと、ひとつ言い忘れてた」

不意に彼が深刻な顔をして、ベッドの上で正座する。

「藍衣が記憶を失くしている間のことだけど。まだエッチはしてない」

大真面目な顔でなにを言うかと思えば。呆れと苛立ちが吹き出してきて、頭に血がのぼった。

「当たり前じゃないですか! この変態!」

咄嗟に近くにあった枕を掴んで投げた。見事彼の顔にクリーンヒットして、黎士は「ぶっ……」と呻き声をあげる。

「もう! 枕返してください!」

「いや、投げたのは藍衣だろ!?」

くだらないやり取りをしてそれぞれのベッドに入る。

夜の空と海を見て落ち着いたからか、枕を投げて緊張がほぐれたのか、朝までぐっすりと眠りにつくことができた。




< 105 / 252 >

この作品をシェア

pagetop