天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
第五章 モノトーンなあなたに彩りを
朱璃のいる別邸を訪問して一カ月。藍衣はロイヤルフロアのコンシェルジュが着る淡いグリーンの制服に袖を通すことができた。
必死に体力向上に励み、ようやく働けるまで回復したのだ。事故から実に一年と四カ月ぶりの仕事だ。
「今日からまたよろしくお願いいたします」
コンシェルジュルームで同僚たちに挨拶をする。見知らぬスタッフもいるが、懐かしい顔ぶれも多く、みんなが藍衣を温かく迎えてくれた。
「期待してるわよ、黒芭さん」
白衣のポケットに手を突っ込んでそう微笑んだのは伯母の一葉だ。
復帰初日ということもあり、挨拶の場に足を運んでくれた。ちなみに彼女は、仕事中やほかのスタッフの前では『藍衣』ではなく『黒芭さん』と名字で呼ぶ。
「精一杯尽力いたします」
ブランクもあるため、まずはベテランに付き添われてのスタートだ。
この一年四カ月の間に手順が変わった仕事もあるという。新人に戻った気持ちで臨む。
入院患者への施設案内、面会管理、要望対応などをこなしていると、だんだんと業務を思い出してきた。この調子なら、ひとり立ちまでそう時間はかからないだろう。