天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
そんな中、退院する患者の会計手続きと処方薬の手配のため、外来棟へお使いを頼まれた。

通りかかった救急外来で、搬送されてきた患者が処置室に運び込まれていくのが見えて、思わず足が止まる。

「七十代男性、胸痛と喘息のような症状を訴えています。三十分前にネブライザーを使用、効果がなかったそうです」

ストレッチャーを押す救急隊員たち。そこに白衣をなびかせ颯爽と現れたのは黎士だ。

「サチュレーションは?」

「搬送時八十七。酸素投与後、八十九に回復」

そこへ看護師が「滝沢先生」と駆けてくる。

「カルテ、ありました。喘息、心疾患ともに既往歴があります」

話を聞いた黎士は、処置室のスタッフに向かって指示を出した。

「モニターつけてルート確保。身体所見では心不全による呼吸困難が優位。喘息か切り分ける。肺エコー準備」

ストレッチャーは処置室へと滑り込み、両開きのドアがバタンと閉まる。

一連の緊迫したやりとりと黎士の真剣な横顔を見守り、いつの間にか藍衣は立ち尽くしていた。

家ではのんびりとしている彼だけど、患者の前では真摯な姿を見せる、そんな当たり前を実感した。

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