天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「ヘビーなオペにならなくてよかっただろ? こうしてのんびり昼食も食べられるし、患者さんの奥さんもホッとしてたみたいだし」

「黎士さんの昼食と、奥様の気持ちを並列にしないでください……」

「俺の昼食は重要じゃないってこと?」

そんなふたりを見て一葉はあっはっはと軽快に笑った。

「あなたたち、一年以上経っても変わらないわね」

「そうなんですか?」

「ええ。記憶を失ってまでそうなんだから、この関係が染みついているのね」

驚いた顔の藍衣。一方、少々不服な顔の黎士。

「婚約したのに。どうして変わらないんだ?」

「猫の例え話、してたじゃありませんか。『猫が嫌い』だった事実を思い出せなくても、猫を見れば『近寄りたくない』と思うって」

「俺の例え話、そんな殺伐としてたか?」

顔を背けてぺろりと小さく舌を出す藍衣。余談だが、猫は好きだ。

一葉はそんなふたりを微笑ましく見守る。

「うまくやっているようで安心したわ。うちの父が藍衣に結婚を命じたのは少々横暴だったでしょう? 郷一郎も随分と反対していたし」

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