天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
あまりにもあっけなく承諾されてしまい、ムッとくる。周囲に納得してもらえたとはいえ、一時はどうなることかと肝を冷やしたのだ。当事者であるはずの黎士が高みの見物とは、こちらの気が収まらない。

「滝沢先生、随分とおモテになっていたみたいですね。看護師たちががっかりしていましたよ」

いやみのつもりで言ってみたのだが。

「え? 嫉妬?」

むしろ嬉々とした顔をされてしまい、失敗したなあと反省する。

「違います」

「心配しなくても、俺は藍衣しか見てない」

「心配してません」

ほくほくと表情を緩ませている黎士。残念ながら、こちらの気苦労はまったく伝わっていない。

「でも、これでスタッフたちに追いかけられることもなくなるか」

ふと黎士が白衣のポケットに手を突っ込んで、安堵したように息をつく。

「苦手だったんだ。応えられやしないのに、一方的に好意を寄せられるのは」

ふとコテージで彼が口にした内容が頭をよぎる。

『俺に執着する人たちが次々と不幸になっていく』――彼は誰かに好きと言われるたびに、その人の期待に応えられないことや相手が抱く身勝手な失望を、自らの罪として背負い続けてきたのかもしれない。

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