天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
患者は東雲一苺(しののめいちご)、二十八歳。二カ月に渡って微熱が続いたため精密検査をすることになり、このロイヤルフロアにやってきた。

入院期間は二週間程度を予定しており、病室のランクアップをご希望だ。

特筆すべきはその職業。一代でロイヤルフロアに入室できるほどの財を築き上げた彼女は、経営者でも資産家でもない。

インフルエンサー――SNSや動画配信サイトで活躍し、ときにはテレビにも出演する売れっ子である。

「入ってー」

誰にでも分け隔てなく笑顔で、砕けた言葉遣いをする彼女。幼女めいたあどけない愛らしさが男女問わず人気なのだとか。

今回、このロイヤルフロアを利用することになったのはストーカー対策だ。一度は一般病棟に入院したのだが、熱心なファンが病棟に侵入し大騒ぎになった。

病院側からセキュリティが万全なロイヤルフロアへの転院を勧め、彼女自身も『防音の個室があるならぜひ使いたい。そこから動画配信の仕事ができるから』と同意したそうだ。

ロイヤルフロアへの転室にあたってスタンダードルームを手配したが、『せっかくの機会だからもっとセレブな部屋に泊まってみたい』とおっしゃっている。

「現在ご案内可能なお部屋について、説明に参りまし――……」

ふと見ると、テーブルの上にはまだ昼食が残っている。手をつけた形跡はあるが、ほぼ減っていない。

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