天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
心当たりのある人物がひとり、いるにはいるのだが。なぜ黎士がその彼を忌ま忌ましげに語るのかはわからない。
「……亜嵐くんのことでしょうか。彼にも相談するつもりですよ。東雲様の調理担当ですので」
ロイヤルフロアで調理を担当するシェフのひとり、奥平亜嵐、三十歳。一葉の息子で、藍衣にとっては従兄にあたる。調理場で親しいのは彼くらいしかいない。
どうやら当たりだったようで、黎士があからさまに嫌そうな顔をした。
「だったら、完全にそいつの怠慢だろ。そいつの作る飯を食べないんだから」
「そんなことはありません! 亜嵐くんも担当の栄養士さんも、趣向を凝らしたおいしいメニューを提供してくれています。ロイヤルフロアは患者様ひとりひとりに合わせたカスタムメニューを採用していますので、事前にアンケートを取って、苦手なものは代替の食材を用意しますし」
「じゃあ、どうして食わないんだ?」
「……東雲様いわく『飽きちゃった』と」
キッチンとソファ、それぞれの場所でふたり同時にため息をつく。
「……亜嵐くんのことでしょうか。彼にも相談するつもりですよ。東雲様の調理担当ですので」
ロイヤルフロアで調理を担当するシェフのひとり、奥平亜嵐、三十歳。一葉の息子で、藍衣にとっては従兄にあたる。調理場で親しいのは彼くらいしかいない。
どうやら当たりだったようで、黎士があからさまに嫌そうな顔をした。
「だったら、完全にそいつの怠慢だろ。そいつの作る飯を食べないんだから」
「そんなことはありません! 亜嵐くんも担当の栄養士さんも、趣向を凝らしたおいしいメニューを提供してくれています。ロイヤルフロアは患者様ひとりひとりに合わせたカスタムメニューを採用していますので、事前にアンケートを取って、苦手なものは代替の食材を用意しますし」
「じゃあ、どうして食わないんだ?」
「……東雲様いわく『飽きちゃった』と」
キッチンとソファ、それぞれの場所でふたり同時にため息をつく。