天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「東雲様の食事か。ああ、把握しているよ」
そう言って太い腕を組む大男が、藍衣の従兄、奥平亜嵐だ。
身長は一八〇センチを超えていて筋肉質。一見するとアスリートにも見える風貌だが、そんな見た目に反してシェフというギャップが女性スタッフたちに人気らしい。
藍衣としてはギャップどうこう関係なく、病棟の調理師としてプロ意識が高い点で好感を持っている。
「このままだと栄養失調になりかねない。こっちとしても、なにかしら手は打たなきゃと思っているんだが」
とはいえ手詰まりのようで、悩ましく首を捻る。
「私の方でも東雲様に進んで食べていただくために、考えたことがあって」
「いや、まずその前に」
亜嵐がそっと手をかざし、話を制止する。藍衣の背後に視線を向けて、うしろに立つ白衣の黎士を睨んだ。
「こいつは、どうしてここにいる?」
藍衣は答えようもなく、「ええと」と視線を彷徨わせた。
『亜嵐くんのところに行ってきます』――そう言った藍衣に対し、『俺も行く』と言って聞かなかったのだ。
ふたりの視線が黎士に注がれる。彼は麗しくも冷ややかな目で顎を反らした。
「お前と藍衣をふたりきりにできるわけがないだろ」