天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「いや、毎度意味がわかんねえよ。こっちは仕事だぞ」

「いちいち藍衣に馴れ馴れしいんだ」

「従兄なんだから親しくて当然だろ」

ぶつぶつと言いながら後頭部をかく亜嵐。

(毎度……?)

ぽかんとしている藍衣に、亜嵐は苦い顔で補足する。

「あー……覚えてないかもしれないが。こいつ、昔っから藍衣が仕事で厨房に顔を出すたびに、くっついてくるんだよ」

「そうなの?」

覚えてはいないが、きっと以前にもこういったやり取りがあったのだろう。それにしても、いったいなぜ……。

「もう婚約してるんだろ? これ以上、俺に嫉妬してどうするよ」

「お前が藍衣と一緒にいると思うだけで不快なんだ」

睨み合うふたりを眺め、どう仲裁に入ればいいかと肩を落とす。

(黎士さんが勘違いして嫉妬しているだけだから、放っておいていい……?)

それにしても、あれだけTPOを気にして職場では距離を保っていたのに、どうしてこう、行動が極端なのか。

それだけ亜嵐が気に食わないのか、あるいは厨房を職場とは思っていないのか――両方なのかもしれない。

「――で、東雲様の件だけど。藍衣の考えは?」

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