天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
脳筋って亜嵐のことだろうか? 彼は実は有名大学卒のインテリマッチョなのだが――と説明しかけて、変に反論したら黎士が拗ねそうだなあと気づきやめておく。

「食器もセンスがいいって褒めてもらえました」

患者様の力になれた、そんな実感が強くある。これだからコンシェルジュという仕事はやめられない。

「まあ、藍衣のセンスのよさは俺も保証するよ」

さらりと褒め言葉を口にされ、ありがとうと流そうとするも、ふとどうして彼が自分のセンスについて知っているのだろうと首を捻る。

(そういえば、随分前にもどこかで……)

婚約が決まって彼と対面した日にも、食器について会話をしたが――。

(あの草加模様のプレートは、いったい誰が……?)

黎士に手を引かれて歩きながら、ふと過去の記憶がよみがえってくる。

モノトーンの食器棚。数えるほどしか置かれていない食器。

――『もう少し、生活に彩りを添えませんか?』――

呆れ気味な自分の声が耳の奥で響いてきて、ハッとした。

『誰がこの皿、選んだんだっけなと思ってさ』、そんな黎士の問いかけへの答えが、ようやく湧き上がってきたのだ。

(そうだ……あの食器を選んだのは)

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