天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
白と黒しかないどこか寂しげな食器棚に、色を加えた瞬間を思い出した。



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初めて黎士の部屋を訪ねた日、藍衣は寂しげな食器棚を見て愕然と呟いた。

「食器、少なすぎじゃありません?」

ミニマリストかと思うほど物の少ない部屋だった。それでもリビングダイニングにはソファやテーブル、電子レンジやケトルといった最低限の家具や家電が揃っていたので、シンプルな暮らしを好む人なんだなと思った。

しかし、いざ棚を開けてみると、本当にここに住んでいるのかと疑問を感じるほど、どこも空。

皿も数えるほどしかなく、あまりの生活感のなさに度肝を抜かれた。備え付けの立派な食器棚がただの飾りと化している。

「一人暮らしなんだから、皿数枚とコップ数個あればこと足りる」

開き直って言う黎士に、藍衣は「そういう問題では……」とげんなりした声を漏らす。

「家より病院にいる時間の方が長いし、困ってない」

「それにしても、なんて色のない……」

「家電も家具も食器も、だいたい白か黒だろ」

そのひと言で、黎士がデザインにまるで頓着しない人間なのだとよく理解できた。

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