天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
小首を傾げる様は見下ろされているのにおねだりをされているようで、動揺してしまう。緊張から身をのけぞらせた。

「お友だちでも呼んだらいかがですかっ」

「どうしてふたりで買った食器をわざわざ別の人と使わなきゃならないんだ」

割とごもっともな反論が来て、藍衣はぐっと押し黙る。

「なんでそんなにつれないんだ? 今日だって十秒くらいしか手を繋いでくれなかった」

道すがら、黎士が繋いでくる手をさりげなく解き、また繋がれては解きを何度繰り返したことか。

嬉しさと恥ずかしさがごっちゃになって押し寄せてくるので、初心な藍衣はいたたまれなくてたまらなかった。

「十秒も百回やれば三十分くらいになるでしょう!」

「ならない。たったの十七分弱」

「充分じゃありませんか!」

「俺はもっとくっつきたいんだ」

ダイレクトな要求が来て、窮地に立たされる。

まだ自分でも信じられないのだ。女性スタッフから追いかけられるほど人気で優秀な医師が、なぜ自分を好み、そばに置いておくのか。今でも夢を見ているような気分だ。

「藍衣だって俺のこと好きだろ? この前、家に来たときに付き合おうって言ったじゃないか」

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