天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
そう言われると、はいと言うしかない。実際、彼のことを魅力的に感じているのだから。

普段は頼もしくて格好いいくせに、どこか抜けていて、自分だけに甘えてくる彼をとてもかわいいと感じてしまう。

本当はもっと触れたいと思っている。……決して素直にはなれないけれど。

「好き、ですけれど…………」

真っ直ぐ好きと言ったら負けな気がする。かといって突き放す勇気もなく、曖昧に濁すのが精いっぱいだ。

「藍衣。目を瞑って」

「で、でも――」

「いいから。俺のこと好きなら言うこと聞いて」

顎をくいっと上に持ち上げられたら、心臓が心配になるくらいの速さで鼓動を刻み始めた。

顔が熱くてぼうっとする。この感じだと、血圧一二〇、脈拍一〇〇越えだろう。実際の計測時にこの数値が出たら、医者は「ちょっと深呼吸してやり直してみましょうか」と再計測を勧めてくるはずだ。

彼の大きな手が頬から耳にかけて包み込むように触れる。もう限界、そう感じていたとき。

頬に温もりが触れた。

ぱちりと大きく目を開けると、慈愛に満ちた表情で藍衣を見下ろす彼。

てっきり唇にキスをされると思っていたのに、拍子抜けしてしまった。

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