天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「俺、邪魔?」
首を傾げて尋ねてみると、彼女はうっと小さな呻きを漏らした。
「東海林様のお体のために我慢します。そこに座っているだけでしたら文句はありませんので……ティーポットとお菓子はあそこにありますから、必要でしたらご自身でどうぞ」
突き放しつつもここにいることを許してくれる。いつもそうだ。彼女は最終的に折れてくれる。
かわいいなあと思いながらデスクに肘をつく。
こんな女性は初めてだ。冷たいのに優しくて、こちらから近づくと逃げていく。でも、黎士のことをきちんと見ていて、困っていると手を差し伸べてくれる。
なにより患者第一なところに好感が持てる。黎士が救った命を、大事に大事に守ろうとしてくれる。
人一倍責任感が強く、誰よりも真剣に仕事に取り組む姿勢にも信頼を感じる。
そんなことを考えていると、正面で藍衣が「あの」と声をあげた。
「にやにやしながらこっちを見ないでもらえますか? 気が散るので」
「ああ、ごめん。かわいくてつい」
「はァ?」
思わず漏れ出た本音に、黎士は口元を押さえる。失言を申し訳なく思うとともに、そんな自分が意外で驚いた。