天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「いえ、大丈夫です、安物ですし」

「ちゃんとお礼するよ。顔にクリームつけて外に出てたら、恥かいてたところだし」

きゅっと手を握って見つめると、彼女は気まずそうに視線を逸らした。嫌そうな顔をしているくせに、照れて頬が赤く染まっている。

(うわ、素直。すごくかわいい)

奇しくも自分に触れてくる女性たちの気持ちを、初めて理解できた気がした。好意のある人に触れて反応をもらえると、こんなにも嬉しい気持ちになるのか。

自分が打算を持って人と接するのも初めてだ。

恋――そうとしか言いようのない高揚が、胸の奥から湧き上がってきた。

「わかりましたから……でも本当にお気遣いなく。ちょっとくらい染みになったって平気ですから」

早く手を解放してほしいのか、居心地悪そうに言う彼女。だが、そんな照れた顔をされてはいっそう離しがたい。

「わかったよ。……と、そろそろ交代の人が来るか。俺は東海林さんの様子を見てそのまま医局に戻るから、黒芭さんは気をつけて帰りなよ」

やりすぎて嫌われてしまっても困るので、彼女の手を放し、ハンカチを白衣のポケットに突っ込んだ。

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