天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
上品で賢そうな人だが、美しい笑みには打算や狡猾さが滲んでいる。黎士が苦手とする人種だ。

藍衣の姉というから無下にはできないが、かといって深入りはしたくないなと感じた。

「亜嵐くん。これ、貸してくれてありがとう」

そう言って小ぶりのビニール袋を渡す。四角いシルエットが薄っすらと見える。本でも借りていたのだろう。

「急がなくてよかったのに」

「外来に来たついでだから。それに、藍衣がお世話になっている先生にもお会いできてよかった」

にっこりとした笑みを投げかけてくる朱璃。

一方、亜嵐は外来と聞いて心配そうな顔をしている。藍衣の前では見せない、少し弱気な表情だ。

「どこか悪いのか?」

「大丈夫、いつもの貧血だよ。薬もらっただけ」

どうやら慢性的な貧血らしい。藍衣以上に細い彼女。肌の色も白を通り越して血管が透けて見えそうだ。

「仕事、無理するなよ。それから、ちゃんと飯は食え」

「はーい。また亜嵐くんのご飯、食べに行くね」

「ああ。いつでもこい」

その優しさに溢れた声がけに亜嵐の好意がにじみ出ていた。ああ、この男が好きなのは藍衣じゃなくてこの女性なんだな、そう納得して少しだけ安心した。

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