天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
そう言って藍衣をダイニングに座らせ、ひとりキッチンに立つ。

料理はあまりしないが、まあやればできるだろう。そう思い人参のへたを切り落とした時点で、彼女が「今の音、なんですか!?」と血相を変えて飛んできた。

彼女が見守る中、野菜を切る。ピーラーで人参の表面に二筋入れたところで、「もう大丈夫です」と彼女が制止した。

「危なっかしいので私が作ります。今後、滝沢さんは手術以外でなるべく刃物を使わないでください。スーパーにはカット済みの野菜も売っていますから」

そう言って俺を押しのけて調理台の前に立つ。よほど危なっかしい持ち方をしていたらしい。

「心配してくれるんだ?」

「あなたを心配しているというより、担当の患者様が心配です。万一、手に怪我を追って執刀できなくなったら、彼らの命に関わりますから」

大真面目な顔でそんなことを言う。優しいがちょっと失礼だ。

結局、彼女が代わりにチャーハンを作ってくれた。火を止めたあと、食器棚の前で「本当にお皿が少ないですね」と頭を悩ませながら、大きめの白い平皿の上にチャーハンを盛る。

食事を終えたあと、黎士は藍衣にこの家の鍵を渡した。

「これ、持っていて」

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