天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
まだ正式に付き合うとも話していないうちから渡したせいか、彼女は呆然とする。

「展開が早すぎません?」

「そこは職業柄、仕方ないだろ。不規則すぎて、こうでもしなきゃ会えないんだから」

「……私、まだ滝沢先生と付き合うって言ってませんけど?」

「そうなのか? もう付き合っているものだと思ってた」

言ったもの勝ちだと思い、しれっと宣言してみると、彼女は観念したように息をついた。

「それは、まあ……。好意のない男性の家にわざわざ来たりはしませんけど」

「ようやく認めたな。これからはプライベートで、堂々と藍衣って呼べる」

にやりと笑みを深めると、彼女はぷいっと視線を逸らしつつも頬を染めた。

「……まあ、包丁の使用を禁止した手前、たまには食事を作りに来ないこともないです。患者様のためにも――黎士さんにはしっかり栄養をとっていただかないと」

さりげなく『黎士さん』と名前で呼んでくれたことに感動を覚える。

口元を押さえ、のたうち回りたいほどの歓喜をなんとか抑え込んだ。

「……もう一度、呼んでもらえる?」

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