天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
開いているのは旅行の特集サイトだ。藍衣が喜びそうなプランを数件見繕った。

「お休み、取れそうなんですか?」

「二連休は死守する。それくらいワガママ言ったって文句は言われないだろ」

「一般的には、二連休は全然ワガママではないんですけれどね……」

医師には患者の急変や急患に備えて、自宅や病院周辺で待機するオンコール業務がある。呼び出しがなく結果的に二連休になる場合はあっても、確実に自由を得られる連休は少なく、旅行などの遠出はできない。

黎士には二連休すら難しいことを藍衣は充分理解している。

「一泊でも、近場の温泉くらいなら行ける」

「温泉、ですか?」

「ああ、旅行の定番だと思って。……好きじゃないか?」

記憶を失う前に『温泉に行きたい』と漏らしていたのを思い出したのだが――もしかして、そこまでの興味はなかっただろうか。

「行きたい、ですけど。……それも私の記憶を思い出すため、ですか? 昔、私と温泉に行ったとか?」

思い詰めた顔で尋ねられ、黎士は「え?」と目を丸くした。

「以前、『思い出の場所を巡っていれば、また思い出す』って、おっしゃってましたよね。これもそのための旅行ですか?」

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