天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「……まるで昔の私が素直じゃないみたいに言わないでください」

そう言ってすぐ反論してくるところは、相変わらずだけれど。

どうやら彼女は過去の自分と比べられたくないようなので、これから先は目の前の藍衣だけを見ようと心に誓う。

「昔からずっと愛してるが、俺が見ているのはいつもその時々の君だ。記憶が戻らなくてもかまわない。今の藍衣を心から愛してる」

言葉にして初めて、自分が伝えたかったのはこれだったのだと気付く。

藍衣は呆然としていたが、やがて小さく俯いて、かみしめるかのように「はい」と呟いた。その声は少しだけ鼻にかかっていて、彼女の目は潤んでいた。

「婚約者に藍衣を指名したのは、そのままの意味だ。藍衣とずっとそばにいたいと思った。藍衣のお祖父さんの力を借りてでも、ほかの誰にも渡したくなかった」

彼女の手を持ち上げて、その指先にキスを落とす。

「たとえ藍衣が過去を思い出さなかったとしても、もう一度俺を好きになってもらえばいい、そう思っていた。だからもし、今、藍衣の気持ちが追い付いて、俺を信じられると思えたなら」

これ以上にない真摯な眼差しで彼女を見つめる。

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