天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
第七章 運命を捻じ曲げてでも
昨夜遅く、黎士は担当患者の容態が急変したとの連絡を受け、病院に向かった。藍衣は先に就寝したのだが、朝起きるとリビングのソファに力尽きた彼が横たわっていた。
藍衣が階段から降りてくる足音で目を覚ましたようだ、まだ眠そうな目で大きく手を広げる。
「藍衣―……おはよう…………」
「こんなところで眠っていたんですか? 疲れ、取れませんよ?」
「そろそろ藍衣が起きてくる頃かなと思ったから」
手を広げたままの彼を放ってはおけず近づくと、すぐに腕を掴まれ、包み込まれた。
ぎゅむっと強く抱き締められ、気分は抱き枕だ。彼が大きく息を吸い込む。……吸われている?
「あ、あの、なにを」
「猫吸いならぬ、妻吸い」
「やめてください、いい匂いはしないのでっ」
「するする」
三日前、すべてを打ち明けてくれた黎士。なぜ自分を婚約者として指名したのか、藍衣が記憶を失っている間になにがあったのか――彼の口から聞けたことで心のつかえがとれた。
愛し合っていると確認が取れた途端、愛情表現が過剰になり、今に至る。
(もともと、むっつりなくせに甘えたがりな人だなあとは思ってたけど)
まさか吸われるとは。