天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「……邪魔だな」

「は?」

今、とんでもないワードが聞えたような……? 目を丸くしていると、黎士が前に進み出て、栢森の両肩に手を置いてにっこりと微笑んだ。

「使用人は間に合っております。どうぞ、お引き取りください」

その笑みの麗しいこと。思考力を奪う微笑みだ。案の定、栢森は放心したようにぽかんと口を開けて。

「……かしこまりました」

心ここにあらずといった調子で了承すると、くるりと回れ右をして帰っていった。

(ええ? えええ……)

突然の事態に混乱する藍衣。今、なにが起きた?

説明を求めるように黎士を見つめると、彼はわずかに眉間に皺を寄せて呟いた。

「新婚生活に知らない男が入ってくるなんて嫌すぎる。しかも、彼女の世話をするのが男だなんて、あり得ないだろ」

忌ま忌ましげにひとりごちる黎士。

(っていうか今、ナチュラルに『新婚生活』って言った……?)

聞きなれない響きに胸がざわつく。まだ入籍はしていないのだが、彼の中ではすでに新婚なのだろうか。

「どうぞ、入って」

ぶっきらぼうに促され、玄関の中に入る。

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