天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
不安を抱えながらふと斜め上を見ると、思わぬ至近距離で目が合ってしまった。驚いた藍衣はびくりと体を震わせる。

冷静になり、頭をよぎったのは彼と姉との関係だ。

(この人が朱璃姉さんに酷いことを……?)

実を言うと、この男が姉になにをしたのかは知らない。誰も教えてくれなかったし、興味本位で周りの人間に聞いてはいけないと思っていた。

はっきりしているのは、姉は人と話ができないほど心を弱らせていて、今は実家の屋敷とは別の場所に暮らしていること。

――いや、〝暮らす〟というよりは〝引きこもっている〟に近いらしい。精神的病を患い、部屋から外に出られないそうだ。

家から出してもらえなかった藍衣と、別邸から今も出られない朱璃。

仲のいい姉妹なのに、もう一年も会っていない。記憶が抜けている分、藍衣は二年も口を利いた覚えがない。

(それだけトラウマになるようなことを、この人が姉にしたの?)

とんでもない危険人物なのではないか、そんな警戒心が湧き上がる。

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