天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
そう言って黎士の口の端にキスをする。ちゅっという甘い音を鳴らすと、すかさず彼の長い指が伸びてきて、親指と中指で藍衣の顎を掴む。

「かわいいけど、足りない」

引き寄せると今度こそ深く口づける。口内に彼の舌が入り込んできて、体の力が抜けた。

倒れそうになり思わず彼の胸に手を置く。その手に彼は指を絡め、さすったり握ったりする。

呼吸の合間に、黎士が火照った声で囁く。

「藍衣が自分からキスしてくれるようになって嬉しい」

「私だって……したいので」

「いくらでもしてくれてかまわない」

幾度も唇を重ねあって、いい加減、羞恥心が限界を超えたところで藍衣は体を離した。

「もう行きますね。おやすみなさい」

「ん。おやすみ。藍衣も頑張って」

離れた途端、急に恥ずかしさが込み上げてきて、黎士の寝室を飛び出しドアを閉める。ドアに背中をつけて大きく息をして、すっかり荒くなってしまった呼吸をならした。

(ああ……身がもたない)

心臓がドキドキしすぎて、仕事に行く前にヘトヘトだ。毎日これが続くのだろうか? そう考えると恐ろしくも嬉しい。

(記憶を失う前の私は、当然のようにこれをこなしていたの? なんというか……逞しい)

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