天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
自分のことなのに他人事のように感心しながら、藍衣は出かける準備をしにリビングへ戻った。



その日、黎士が仕事を終えて帰ってきたのは二十一時過ぎだった。

「お疲れ様です。魚介のトマトスープが少し残っているんですが、食べます?」

「絶対食べる」

「黎士さん、魚介好きですよね」

「っていうより、藍衣の料理が好きだ」

彼がスーツのジャケットとネクタイを置きに自室へ向かう。その間に藍衣はキッチンでスープを温める。

リビングに戻ってきた黎士は、漂う香ばしい匂いにスンと鼻を鳴らした。

「魚介のいい香り。それから……トースト?」

「ほんのりガーリックバターの効いたバゲットです。スープと一緒に召し上がってください」

「おいしそうだ。俺が運ぶから、藍衣はゆっくりしててくれ」

黎士がスープとバゲットをトレイに載せてダイニングテーブルに運ぶ。藍衣はミネラルウォーターのグラスをふたつ持って彼の正面に座った。

「お疲れ様でした。今日こそしっかり眠ってくださいね」

「昼まで寝てたぞ」

「仮眠でしょう?」

「まあ、不規則な生活には慣れてる。それより、早くシャワーを浴びて藍衣とハグしたい」

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