天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
その言葉にドキドキしているのはこちらだけらしく、彼の方はスープを口に運びながら「あー、いい味」とマイペース。なんだか悔しくなってくる。

「まあ、こういう日に限って急患が来たりするものだけど」

そう言って黎士は、テーブルの端に置いた緊急連絡用の端末に視線を向ける。

すぐ取れるようにだろう、彼は常にこの端末を自分の近く、すぐ気付ける場所に置いているのだ。

「なにごともない、平和な夜だといいですね」

病人や怪我人が出ないに越したことはないのだから。

しかし、そんなことを話しているそばから端末が震え始める。

まだ半分しか食べていないせいか、黎士は若干不機嫌そうに眉をひそめ、それでもツーコールで端末を取った。

「はい、滝沢。――はい。――……!」

冷静に会話していた黎士だが、ふと顔を上げ、深刻な表情になる。

「意識は? ……はい、わかりました。すぐに向かいます」

口にしたときにはすでに立ち上がっていた。食事を全部食べてもらえなくて残念だが、患者の命が優先なので仕方がない。

通話を終えた彼に行ってらっしゃいと声をかけようとすると、真剣な面持ちで藍衣の方を見た。

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