天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「藍衣のお祖父さんの容態が急変した。手術になるかもしれない」

「えっ――!」

ロイヤルフロアでずっと入院を続けている貞平。藍衣は毎日、帰宅前に顔を見に行くのだが、今日は比較的体調がよさそうに見えた、はずなのだが……。

「俺は先に行く。藍衣はあとから来い。危ないからちゃんとタクシーを呼ぶんだぞ」

言い置いて黎士は自室からジャケットを持ってくると、すぐに家を出た。

藍衣も遅れて出かける準備をする。

(お祖父様、どうかご無事で……!)

唇をかみしめて祈りながら、家を出てタクシーに乗り込んだ。



藍衣がロイヤルフロアに着くと、貞平の病室の前には多くのスタッフが集まっていた。中では黎士が心臓マッサージを施していて、その脇には深刻な表情の一葉もいる。

「藍衣!」

廊下を駆けてきたのは亜嵐だ。容態の急変を聞きつけて、家から駆けつけたのだろう。

「祖父さんは――」

そう言って病室の中を見た亜嵐が「っ……!」と息を呑む。非常に危険な状態だというのは医師や看護師でなくても見てとれた。

「夕方に顔を見たときは、元気そうだったのに」

藍衣の声が掠れる。少しでも気を抜けば涙がこぼれ落ちそうだ。

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