天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
視界の端には、悲しみを堪えるように目を伏せる一葉。そして、その隣には――。

(お父様……)

久しぶりに会う父、郷一郎の姿。

家を出てからは父に会う機会に恵まれなかった。というのも、父に会いに実家に戻ろうとしても、連絡するたびに不在だったのだ。

最近は仕事が忙しいのか、栢森曰く、実家にはあまり戻っていないようだ。

どこか避けられているようにも感じて、嫁に出た娘になど興味はないのだろうか、と不安に思いもした。

(お通夜が終わったあとにでも、幸せに暮らしていると、顔を見てきちんと伝えなければ)

そして、黎士が姉の仇だというのは誤解だと伝えたい。黎士のもとに嫁いでも心配はない、幸せになれると説明しなくては。

しかし、焼香を終えたあと親族の控室に戻ってみると、郷一郎の姿はなくなっていた。早々に帰ってしまったのだろうか。

「お父様……」

呟きを聞いた一葉が、出口の方に視線を向ける。

「郷一郎なら、ついさっき出ていったところよ。まったく慌ただしいのだから」

ついさっきというなら、追いかければ間に合うかもしれない。藍衣は荷物を預けたまま急いで式場を出ると、隣接する駐車場に向かった。

「お父様!」

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