天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
西洋の彫刻のごとく整った麗しい顔立ちに感情は宿っておらず、金になど興味はないと言いたげだ。

「金でも土地でも船でも、なんでもかまわん。望みを言え」

その言葉にようやく興味をそそられたのか、黎士の目が貞平に向かう。「それなら――」と形のいい唇をゆっくりと動かした。

「黒芭藍衣(あい)を、僕にください」

驚きのあまり目を見開く貞平。その眼差しを受け止めるように、黎士は無機質な微笑を張り付けている。

「私の孫娘を……娶りたいというのか?」

正しく意図が伝わったのを確認し、今度こそ黎士は満足げに微笑んだ。

その笑みに多くの人間が魅了され、惑わされ、人生を狂わせた。傾国の美貌を持つ若き外科医の手によって、またひとりの人生が狂わされようとしている。

「わかった。藍衣を君に嫁がせよう」

貞平が目配せすると、部屋の隅に立っていたスーツ姿の男――貞平の専属秘書が一歩前に進み出た。

「貞平様。よろしいのですか? 最愛のお孫さんの伴侶をこのような形で――」

そう進言しようとしたが、たおやかに微笑む黎士と目が合い、言葉を呑み込んだ。

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