天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
藍衣の逃げ道を断つように後部座席のドアが閉まる。両側にはスーツ姿の男性。降ろしてと騒いだところで、押さえ込まれてしまうだろう。

(お父様は私をいったいどこへ連れて行く気なの……?)

なぜこんな強引な真似をするのか。正しい相手との結婚とは。謎ばかりを残し、車は夜の街に向けて走り出した。



***



緊急手術が終わり帰宅する頃には二十二時を過ぎていた。

自宅にはすでに戻ってきているはずの藍衣の姿がなく、黎士は怪訝に思い彼女のスマホにコールする。

長いコールのあと、『滝沢か?』と出たのは、いかつい男の声。すぐに相手が亜嵐だとわかり「あ? なんのつもりだ」とどすの利いた声で脅す。

『違う違う、喧嘩売ってるわけじゃねえからキレるな! 今、自宅か? 藍衣、そっちにいるか?』

「いないからかけてるに決まってるだろ、ふざけてるのか」

『だから違うって! 藍衣がいなくなったんだよ、式場に荷物を残したまま』

「は?」

苛立ちを通り越した怒りの声があがる。

「どういうことだ」

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