天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
『焼香が終わったあと、控室に荷物を残して消えた。どうやら父親のあとを追いかけていったらしいんだが、そのまま戻ってこないんだよ』

「父親……?」

かつて貞平に聞いたことを思い出す。

『娘たちを金で売り捌く』――嫌な予感が胸をよぎる。まさか今になってそんな行動に出るつもりでは。

「父親と一緒に実家に帰ったってことか?」

『そう思って実家にも連絡したんだが、いないそうだ。今、使用人たちにも行方を探してもらってる』

完全なる行方不明――いてもたってもいられなくなり、「くそっ……!」と毒づいた。

「警察に連絡を――」

『いや。正直警察より、祖父さんのコネを総動員して探してもらった方がよほど頼りになる。資産家御用達の警備員とか調査員とか、そういうのがいるらしいから。とにかく、明日には見つかるだろうから心配するな! あんたは患者もいるんだし、今は変に動かないでしっかり体を休めとけ』

「そんな悠長なこと、できるわけないだろ! 俺も探しに――」

『藍衣がいたらなんて言うか、考えろ』

痛いところを突かれ、ぐっと押し黙る。

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