天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
藍衣ならば間違いなく『患者のために体を休めろ』と言うだろう。とくに明日は大掛かりな手術の予定がある。ほかの医師では成功率が大きく下がるような、替えが利かない手術になる。

患者より藍衣の方がよほど大事だが、万一手術に穴を開けることになれば、真面目な藍衣が決して許さないだろう。

『こっちは何十人って体制で探してるんだ。お前ひとりがいてもいなくても変わらない。自分にできることを考えろ』

「……明日のオペが終わるまで、藍衣のことは任せる。それまでに見つからなかったら、俺は全力で藍衣を探しにいくって、お前の母親に伝えとけ」

通話を切って、スマホをソファに投げ置く。その場に座り込んで項垂れた。

(俺は何度彼女を見失えば気が済むんだ……!)

手を伸ばしても、掴んだかと思えば指の隙間からすり抜けていく。

「無事でいてくれ……」

すぐにでも探しに行きたいが、頭の中の藍衣が〝行くな〟〝それはあなたのやるべきことではない〟と止める。

こんなときだけ冷静な自分に嫌気が差しつつ、尖った神経を無理やり鎮め、休息に全振りした。




翌朝、ロイヤルフロアに向かい手術を控えている患者の診察をした。

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