天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
御年七十三歳の資産家だ。心臓の手術は三回目になる。
自身の大動脈弁を温存したまま再建する置換手術を予定しているが、過去の手術による負担に加え、持病を抱えていること、臓器の位置が鏡のように反転している内臓逆位という特殊条件まで重なり、難易度がかなり高い。
「そういえば、あの黒芭さんがお亡くなりになったんですって?」
患者が不安そうに口にする。ロイヤルフロアで最もVIPだった貞平の訃報は広く伝わっていて、動揺している患者も多い。
「黒芭さんは手を尽くす間もないほどの急変で、私も無念に感じています」
黎士は素直に答えた。急変という言葉通り、あまりにも前触れがなかったため、黎士自身も驚いている。
そういうケースがゼロとは言わないが、それにしても不自然で今でも気がかりだ。
「手術は万全の準備で臨みますから心配なさらないでください。必ず成功します」
微笑みとともに断言すると、彼は満足したように笑った。
「実に頼もしいな。なにより滝沢先生は人のお姿を借りた御仏のように美しいから、ご加護がありそうだ」
両手を合わせて拝む彼に、黎士は微笑んで御仏に徹する。
自身の大動脈弁を温存したまま再建する置換手術を予定しているが、過去の手術による負担に加え、持病を抱えていること、臓器の位置が鏡のように反転している内臓逆位という特殊条件まで重なり、難易度がかなり高い。
「そういえば、あの黒芭さんがお亡くなりになったんですって?」
患者が不安そうに口にする。ロイヤルフロアで最もVIPだった貞平の訃報は広く伝わっていて、動揺している患者も多い。
「黒芭さんは手を尽くす間もないほどの急変で、私も無念に感じています」
黎士は素直に答えた。急変という言葉通り、あまりにも前触れがなかったため、黎士自身も驚いている。
そういうケースがゼロとは言わないが、それにしても不自然で今でも気がかりだ。
「手術は万全の準備で臨みますから心配なさらないでください。必ず成功します」
微笑みとともに断言すると、彼は満足したように笑った。
「実に頼もしいな。なにより滝沢先生は人のお姿を借りた御仏のように美しいから、ご加護がありそうだ」
両手を合わせて拝む彼に、黎士は微笑んで御仏に徹する。