天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「借金の肩代わりを盾に、人の娘に好き勝手しおって……! だが幸いやつは死んだ。消えてもらったというべきか――まあ、いい。藍衣は戻り、遺産も転がり込む」

手応えを確かめるかのように、自身の手のひらを握る郷一郎。

「今度こそ最良の結婚をしてもらうぞ、藍衣! 幸運なことに、お前との結婚に結納金を三億払ってもいいという男が現れた。あの家の財力なら、今後もいくらでも金を搾り取れる!」

「いや! いやよ! 私は黎士さん以外の人と結婚しない……!」

「ほう? だったら朱璃を売るしかないか。あの精神状態なら二束三文にしかならないが、女を買う物好きはいる。それなりになるだろう」

なんて恐ろしいことを考えるのかと、藍衣は眩暈がした。

実の娘に対する愛などこれっぽっちもない。これが父の本性だというのか。

郷一郎は愕然とする藍衣の髪を掴むと、乱暴に上を向かせた。

「朱璃はお前を庇うために、自ら政略結婚を受け入れた。なのにお前は、我が身かわいさに姉を売るのか」

悪魔のような顔で覗き込んでくる父を、唇をかみしめながら睨みつける。

「やめて。朱璃姉さんに酷いことをしないで」

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