天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
いつもの調子でふわふわ笑う姉。けれど堪えきれなくなったのか、自嘲めいた言葉を漏らす。

『あーあ、私ったらついてないなあ。藍衣はあんなに素敵な人に愛されて幸せになるのに、私はお父さんの借金のために金持ちに売られるなんて』

泣き笑いを浮かべる姉に、なんて言葉をかければいいのかわからなかった。

妹に泣いているところを見られまいと、朱璃は慌てて歩道橋を降りようとする。しかし、涙で足元が滲んだのか階段を踏み外し――。

『きゃっ』

『朱璃姉さん! 危ない!』

『藍衣! ダメよ!』

助けようとして手を差し出した藍衣ごと、階段から転がり落ちたのだ。



***



突然押しかけてきた朱璃を、黎士はリビングのソファに座らせた。藍衣の居場所について心当たりがあるようだったからだ。

彼女はローテーブルの上に持参したノートパソコンを広げながら、これまでのことを説明した。

「父は私たち姉妹を資産家に嫁がせようと縁談を進めていた。これを見て」

朱璃がパソコンの画面を見せる。メーラーが開かれていて、『次女・藍衣との縁談について』という件名が表示されていた。

「メール?」

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