天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
笑顔で言いのけた朱璃に、黎士はぞわりと背筋を冷たくする。

決して冗談などではないだろう。郷一郎は金のためにそこまでする人間なのか。

(じゃあ、まさか黒芭さんが亡くなったのは)

貞平の不可解な死にいっそう違和感を覚えた。この状況を郷一郎が望んでいたとするならば、まさか貞平は――。

朱璃はカタカタと手早い様子でパソコンに文字を打ち込み、別の画面を表示させる。

「お祖父様が藍衣と黎士さんの結婚を命じたことで、父の企みは破綻した。でも父は懲りずに、今度は私の買い手を探し始めたの。今の私の状態では、まともな縁談は無理だと踏んだんでしょう、女を買う物好きな資産家を集めてオークションのように値段を競わせた」

画面に表示されているのは、通常のブラウザからでは辿り着けない非合法の温床・ダークウェブ。そこに朱璃の顔写真と健康状態、そして競りのように値段が付けられていた。

「……最低だな」

「だから私は一週間前、あの別邸を出て父の前から姿をくらましたの」

「それで変装めいた格好をしているのか。……だが身を隠すには金が必要だろう、大丈夫だったのか?」

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