天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
無表情のまま訪ねてくる。整いすぎていて緊張感を煽る顔だ。反応を探られているようで怖くなる。

「いえ、自分のことは自分でできます。まだ体力が完全には戻っていませんが、家事程度でしたら、問題はないと思います」

「じゃあ、少しずつ家事でリハビリして。無理はしなくていい。必要なら、ハウスキーパーを雇うから」

「でしたら栢森を――」

「女性にして。日中、藍衣とふたりきりにするのに男は信用できない」

廊下を進んでいく黎士の背中をぽかんと見つめる。

男性不信だろうか? いや、今の言い方は嫉妬に近い気がする。婚約者に手を出されたくない、そんな執着を持っているのかもしれない。

黎士は廊下の先にあるドアを開けて、先に入るよう藍衣を促す。

「主治医は白薔薇の脳外にいるんだよね? 経過について話をしておく。これからは俺が診るから」

そう言われて、この男が優秀な医師だったことを思い出す。

「専門は心臓と伺いましたが?」

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