天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
彼女はなんとか息を整え、顔を上げた。涙の滲んだ覚悟の眼差しで黎士を見つめる。

朱璃は自分を責め続けた末、罪と真っ向から向き合うことを選んだのだろう。藍衣のためになにかをしようというその言葉に嘘はないのだと伝わってきた。

「でも私ひとりじゃ、父のパソコンを覗くくらいしかできない」

無力さをかみしめる彼女に、黎士は「充分だ」とぶっきらぼうに言い放つ。

「安心しろ。俺が藍衣を助ける」

貞平はこの日のために、黎士に試練を課したのだろう。自分亡きあと孫娘を守り切れる男かどうか試したに違いない。

そして黎士は自身の価値を示し、藍衣に相応しい男だと証明した。その証明は自信にも繋がっている。

(他人の人生を狂わせる、そう思ってこの身を呪っていた。だが、藍衣だけは――)

必ず幸せにする。唯一、ありのままの自分を愛してくれた大切な女性なのだから。

今この瞬間、彼女の人生が破滅に向かっているとするならば。

(運命を捻じ曲げてでも彼女を幸せにする。俺が幸せにしてやる)

どこかで自分を待ってくれている彼女を思い、覚悟を決めた。



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