天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「あの別邸は多くの人間に場所を知られているからな。身柄は移送した。朱璃自身はまあ、元気だ。頭は少々おかしいが、体は充分売り物になる」

見透かされている――藍衣は苛立ちをぐっと堪え、大人しく与えられた着物に着替える。

使用人にヘアメイクを施されたあと、ホテルを出る。これから先方の家に向かうらしく、郷一郎とともに黒い高級車に乗り込んだ。

「行儀よく振る舞えよ。できなければ……わかっているだろうな」

助手席の郷一郎に脅され、後部座席の藍衣は静かに頷く。

車を走らせて二時間。辿り着いたのは都心から遠く離れた、木々に囲まれた静かな別荘地だった。

その中でも人があまり寄り付かない奥地に、壮大な屋敷が建っている。

手入れされた庭や敷地の広さから、相手は相当な資産家であると想像がつく。

車を降りた藍衣と郷一郎は、屋敷の執事に客間へと通された。

庭の木々がよく見える大きな窓と暖炉。ふかふかの絨毯の上にはアンティーク調の椅子とテーブルが並んでいる。

上品な造りのその部屋でふたりはこの家の主・篠森(しのもり)に歓待された。郷一郎と同じくらいの歳の、恰幅のいい男性である。

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