天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
一葉の提案に朱璃は「助かります~」と頬に手を当てた。

「新しい仕事を探すにも家がないと厳しくて。最悪、藍衣のところに泊めてもらおうかと思ってたんだけど」

すかさず亜嵐が「新婚宅にお邪魔するのはしんどいだろ」とツッコミを入れる。

朱璃は「ほんとそれ~」と朗らかに笑った。思わず藍衣は赤面する。

「実家のことや郷一郎のこと、朱璃のことも私に任せて、藍衣は自分の人生と向き合いなさい。結婚するんでしょう?」

一葉の言葉にこくりと頷く。ようやく懸念がすべてなくなり、スタートラインに立ったような気分だ。

この先は黎士と、ふたりの幸せを考えていきたい。

「黎士さん。妹をよろしくね」

ぱちんとウインクした朱璃に、黎士は「もちろん」と頼もしく答える。

「俺が藍衣を必ず幸せにします。任せてください」

そう断言する黎士の横顔を、藍衣はひっそりと眺める。

記憶がすべて戻ったわけではないが、この人をずっと愛し続けてきたという漠然とした感覚がある。ようやく結ばれるという達成感も。

彼に愛されてよかった、彼を愛せてよかった、今はそんな安堵感でいっぱいだった。



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