天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
あの瞬間、はっきりとわかったのだ。結婚するなら黎士がいい。ほかの誰が相手でもダメなのだと。

「私、黎士さんがいいって心の底から思えたんです」

「ようやく? 俺はずっと思ってたんだが」

呆れたように言ったあと、くすっと麗しい笑みを浮かべて、藍衣の後頭部に手を回した。

「同じ気持ちになれて嬉しい。これで堂々と藍衣の夫を名乗れる。……もう藍衣は誰にも渡さない」

そう宣言し、唇にキスを落とす。深く舌を絡め、まるで離れていた間の空虚な気持ちを埋めるかのように激しい口づけを落とした。

「今すぐ、俺と結婚して。もう誰の邪魔もされないように」

吐息交じりに囁いて、再び藍衣に口づける。忙しないキスから彼のこれまでの不安が伝わってきた。

「私も、今度ばかりは賛成です」

入籍のタイミングをもったいぶっていたから、別の男性と結婚させられそうになったのだ。そうそうこんな事態にはならないだろうけれど、一刻も早く一緒になって安心したいと思う気持ちは教訓のようなものだ。

愛する人との結婚に、迷いは必要ない。

荒い吐息とともに、黎士が襟元に触れる。

「だったら、この窮屈そうな着物も脱がしていいか?」

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