天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
雑に閉めていたカーテンの隙間から、うすぼんやりとした明け方の光が漏れてきて目が覚めた。
ミルク色の優しい光に染まった彼の寝顔が清麗で、思わずじっと見入ってしまう。
身じろいだせいか起こしてしまったらしく、彼もゆっくりと瞼を開ける。長い睫毛が持ち上がって、黒の中に青い光の混じった輝く濡羽色の瞳がこちらを向いた。
「綺麗」
思わず呟いた藍衣に、黎士は「……ん?」と尋ね返す。
「明け方の優しい光に染まって、とても綺麗」
瞳も、端整な横顔も、艶やかな黒髪も、全部が美しい。彼はいつだって麗しいが、今このときはほかのどんな瞬間よりもはるかに魅力的に見えた。
「藍衣が綺麗と言ってくれるなら、この顔に生まれたかいがあった」
彼が藍衣の手を掴み、指先を絡めて唇に持っていく。
ゆったりとしたリップ音は、目覚ましのごとく藍衣の体をほくほくと暖めてくれる。
「……でも一番綺麗なのは、この手じゃないでしょうか」