天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
エピローグ


なんの記念日でもない十月の吉日。藍衣と黎士は婚姻届を提出した。

ゴロのいい日なんて待っていられない、今すぐ夫婦になりたい、珍しくふたりの意見が一致した。

早速注文した結婚指輪を左手の薬指にはめて、ふたりは墓石の前で手を合わせる。

墓石には『黒芭家』の文字――ここに藍衣の母や祖父母が眠っている。

「お母様。私は今、とても幸せです」

母へ結婚を報告。それから、もうひとりの最愛の人物に祈りを込めた。

「お祖父様。ずっと見守ってくれて、ありがとうございました。どうかゆっくりお休みください」

隣では黎士も黙って手を合わせている。

あの一件が片付いたあと、藍衣は無事に職場復帰を果たした。

貞平の死が殺人ではないかという疑惑が持ち上がり、警察やマスコミが押しかけるなど院内は一時騒然としたが、一月経った今は落ち着いている。

郷一郎は殺人罪で起訴され、手を貸したとされる関係者とともに勾留されている。

祖父の命が父の手によって断たれた、そう考えると悔しさや悲しみ、激しい怒りも湧き上がってくるけれど、かといって父親相手に強く憎むこともできず、心中は複雑だ。

郷一郎はほかにも人身売買や営利目的略取、誘拐、監禁などの罪を問われていて、今も捜査が続けられている。

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