天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
ちなみに黎士の両親にも挨拶を済ませた。突然恋人を連れてきたことでご両親は大層驚いていたが、彼の気まぐれで衝動的な気質は昔からのようで「こんなこともあるんじゃないかと思っていた」と変な納得のされ方をした。

藍衣の家柄に驚き、父親が起訴中であることには眉をひそめていたが、息子の決断を信じるといって結婚に賛成してくれた。

ぶっきらぼうな黎士とは真逆の、人当たりのいいご両親だ。藍衣自身のことは真面目そうなお嬢さんだと気に入ってくれていて、この先、良好な関係を築けそうだと藍衣は思っている。

「慌ただしい一カ月でしたね」

藍衣も感慨深くこれまでのことを振り返る。

「……というか、俺たちが出会ってから、慌ただしくないことなんてあったか?」

ふと黎士が首を傾げる。確かに、記憶喪失や突然の婚姻、職場復帰を経て拉致監禁など息つく暇もない出来事の連続だった。

「でもこれで、心置きなくゆっくりできますね」

気がかりなことはすべて片付いた。この先は穏やかな新婚生活が待っているはず。

「まあ、仕事は相変わらず忙しいが……ようやくふたりきりの時間が楽しめるな」

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