天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
(え、私、そんなにおもしろいこと言ったつもりは……)

このお皿が素敵だと、素直にそう言っただけで。

「あ、あの?」

「いや、ごめん。誰がこの皿、選んだんだっけなと思ってさ」

(それ、笑うところ?)

まだ肩を震わせている彼をまじまじと見つめながら首を傾げる。

やっぱりちょっと……いや、だいぶ……変な人なのでは。

体を気遣ってくれたり、料理を作ってくれようとしたり、一見すると悪い人には見えない。先入観を持たずに会っていたなら、少し不器用なだけの善良な人に見えていただろう。

それでも父は言っていた。彼こそ、姉をあんな状態にした仇なのだと。

(本当に、この人が……?)

いったいふたりの間でなにがあったのだろう? 姉が家から出られなくなるほどの痛ましい出来事が起きたというのか。

恐ろしくて聞けないけれど、できれば勘違いであってほしい――そんな気持ちが芽生え始めていた。



その日は早めに風呂に入り、床に就いた。

疲れていたせいか、これまで悩まされていた不眠もなんのその。朝までぐっすりと眠れて、とても健康になった気分だ。

(昨日一日は、黎士さんとのトラブルはとくになかった……)

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