天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
統括部長であり伯母である一葉と、誰もいない夜のコンシェルジュルームでよく雑談を交わしたっけ。
その会話に、たまに白薔薇の医局から診察に来た医師も交じっていた。呼んでもないのにふてぶてしくコンシェルジュルームに押し入ってくる、長身の白衣の男性だ。
(あれ……?)
顔と名前が思い出せなくて不思議に思う。仕事で世話になった人の顔をそうそう忘れるとも思えないのだが――なにかがおかしい。
(この記憶って、まさか……)
事故で失ってしまった、あの一年間の記憶?
そう感じた瞬間、視界がぐらりと揺れた。
「藍衣……!」
一瞬だけ意識が飛んで、気がついたら黎士の腕の中にいた。鬼気迫る声で名前を呼ぶ彼を見て、自分が倒れたのだと悟る。
「……っ、ごめんな、さい。……大丈夫、少し疲れただけで」
突然様々なことを思い出したから、脳が悲鳴を上げたのかもしれない。
「そのまま、じっとしてて」
黎士はそう念を押すと、長身を屈めて藍衣の膝裏に手を回し、ひょいっと横向きに抱き上げた。
「れ、黎士さん!」
「緊急事態だ。許せ」
そう命令して、黎士は自身の部屋に運び込む。
その会話に、たまに白薔薇の医局から診察に来た医師も交じっていた。呼んでもないのにふてぶてしくコンシェルジュルームに押し入ってくる、長身の白衣の男性だ。
(あれ……?)
顔と名前が思い出せなくて不思議に思う。仕事で世話になった人の顔をそうそう忘れるとも思えないのだが――なにかがおかしい。
(この記憶って、まさか……)
事故で失ってしまった、あの一年間の記憶?
そう感じた瞬間、視界がぐらりと揺れた。
「藍衣……!」
一瞬だけ意識が飛んで、気がついたら黎士の腕の中にいた。鬼気迫る声で名前を呼ぶ彼を見て、自分が倒れたのだと悟る。
「……っ、ごめんな、さい。……大丈夫、少し疲れただけで」
突然様々なことを思い出したから、脳が悲鳴を上げたのかもしれない。
「そのまま、じっとしてて」
黎士はそう念を押すと、長身を屈めて藍衣の膝裏に手を回し、ひょいっと横向きに抱き上げた。
「れ、黎士さん!」
「緊急事態だ。許せ」
そう命令して、黎士は自身の部屋に運び込む。