天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
(どうしてキスなんてするの……!)

まだ熱の残る唇を隠すように押さえながら、藍衣はベッドに体を丸めて横たわった。



目が覚めると、カーテンの隙間から白んだ空の淡い光が差し込んでいた。

(朝……六時?)

時計を見て驚く。昨夜、ここで体を休めたまま、すっかり寝入ってしまったらしい。

(彼は……)

ゆっくりと立ち上がり、体の具合を確かめる。幸い頭痛は治まったようで、昨日の疲労も癒えていた。もう倒れることはないだろうと寝室を出る。

リビングの入口に立ち、目を見開く。探していた黎士はソファの上で肌掛けにくるまり、丸くなって眠っていた。

(私にベッドを譲ったから……)

困惑したままソファに近寄る。すやすやと寝息を立てる彼を起こすわけにもいかず、途方に暮れた。

今日もこれから病院に向かい、難しい手術をいくつも執刀するのだろう。彼が優秀な外科医と評されるのならば、ほかの医師にはできない手術を息つく暇もないくらいこなすはずだ。

替えが利かない貴重な人材、大切な体。できれば、自分をどけてでもしっかり休んでほしかった。

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