天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「大丈夫。ほら、気を揉んでいてはよくなるものもならないだろう。今は療養に専念するときだ」

自室に戻れと促されるが、いい加減外に出たい藍衣は食い下がる。

「私はもうすっかり元気だから――」

「そんなわけがない! まだ頭痛がするんだろう? 夜もよく眠れないというじゃないか」

「だからそれは――」

頭痛は気圧のせいで、昔からそういう体質なのだ。夜眠れないのは、日中ずっと家にこもっていて体を動かさないから――そう説明しようとするも、郷一郎は聞く耳を持たない。

「本当に心配ない。私は少し出かけてくるから、野々村(ののむら)先生が往診に来てくれるまで、藍衣は部屋で休んでいなさい」

強引にドアを閉められる。ガチャリと、外から鍵をかける音がした。

また閉じ込められてしまったと、あきらめてベッドに腰かける。

(療養のためだからといって、外から鍵をかけるのはやりすぎよ)

過保護な父親のせいで頭が痛くなりそうだ。

数年前まではこうではなかった。外で自由に働いていたし、大した干渉もされなかった。

あの事故が起きてからだ。すべてが狂ってしまったのは。

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